それは「ワンピース」というコンテンツ。

 

思い返せば、幼少期から週刊少年ジャンプで漫画を嗜んできた人間だった。

自分が中学生の時ぐらいが実際のジャンプの黄金期みたいなところがあって、錚々たる布陣が軒を連ねる最強時代のジャンプを毎週購読していた。けれど高校生または受験が近づくにつれ、毎週ジャンプを買うほどの意欲はなくなり、単行本なんかもBOOKOFFでごろっと売ってしまった。

そのうちの一つが『ワンピース』だった。

自分の中のワンピースという作品はその実ウォーターセブンあたりで更新がストップしており、ウォーターセブン自体もどのような経緯をたどっていくつかの名シーンに立ち会えることになったのかおぼろげだった。すなわち自分の中でワンピースといえば、アラバスタ!空島!がどうしても印象深く、まとめサイトにもあるような「昔のワンピースのほうがコマ割りが見やすくて面白かった」などとのたまう輩と大差のない人間になっていた。

それから数年を経たところ、周囲のものたちがワンピースを押してくるし、自分が上記のような人たちと同じ扱いをされるのも癪なのでいよいよ既刊されているすべてのワンピースを購入することにした。数をかぞえて102冊(7月30日時点)。

7月はわりあい仕事が忙しくなく、平日の夜や土日をつかってワンピースをふんだんに読むことにした。1巻から102巻まで、ほとんど空白をつくることなく、まさしく一気呵成に読み上げた。

結果、めちゃくちゃ面白かった。それはもう、めちゃくちゃでハチャメチャに文句なしに。

巻を追うごとに複雑な構図になる場面はちらほらあったのは確かにそう。だけど、それは物語を積み上げていく上で必要なものだったと理解したい。ワンピースという作品は読み直してみると、特定の誰かにスポットを当てた『過去編』を丁寧に慎重に描いている印象がある。それだけ過去の確執や出来事が現在のストーリーを極上に仕上げる上でなくてはならなくて、なおかつそれが作品を通じて影響を及ぼす内容になっているところがなんとも憎らしく、初期で読んだ場面が数十巻先で伏線として回収される展開は誰が読んでも面白いと言わしめる秘訣なのだと感じた。

ワンピースは基本的に訪れる島や国によって、〇〇編と区別でき、読者の間で話す際に便利なワードである。既刊のワンピースを遡ると以下で羅列できる(これも人によって区切り方は異なる。実際には物語は断続的につながっていて明確な線引きが難しい)。

イーストブルー編

・グランドライン突入編

・冬島編

・アラバスタ編

・空島編(デービーバックファイトはウォーターセブンとの中間)

・ウォーターセブン、エニエスロビー編

・スリラーバーク編

・シャボンティ諸島編

・女ヶ島編

・インペルダウン編

・マリンフォード、頂上決戦編

・魚人島編(61巻後、いわゆる新世界編へ突入)

・パンクハザード編

・ドレスローザ編

・ゾウ編

・ホールケーキアイランド編

・ワノ国編(現在も継続中…)

子どものころは麦わらの一味が敵を倒すのが面白いと感じていたけれど、今となってはルフィたちが戦う意思を抱くきっかけになるシーンであったり、物語の味噌となる回想・過去編のほうがじんわり面白いと思うようになった。

空島も、元々はバラバラになった一味がどんどん先に進むにつれ合流したり共闘したりする展開が良かったけれど、今となっては400年前に出会ったノーランドとカルガラの友情の話のほうが圧倒的に好きになってしまった。海に旅立つノーランドに島に残るカルガラが見送るシーンも隠れた名場面だなと思った。

イーストブルー編は初期の仲間たちとの物語がほとんどだけど、今読むとアーロンパークもいいなあ。ルフィたちが戦う理由がシンプルなのがいい。サンジが仲間になる海上レストランバラティエ編は言わずもがな良くて、サンジが手を使わずに戦う理由ってそういえばそうだったなと実感できるストーリー。

ちなみにここから先は適当にワンピースを思い返すだけ。

ウォーターセブンは改めて見返すとボリューム感たっぷりで読むのは時間がかかるけど、その分面白いと思うし、ロビンを連れ戻すために一味が奔走する場面がいい。その中で新たに仲間になるフランキーを巻き込んで、結果的に世界政府に宣戦布告をするシーンがなかなかにパンチ効いてる。また、そげキングがいい味を出してる。ウォーターセブンは「仲間」という点においてウソップ、ロビン、フランキー、そしてゴーイングメリー号がそれぞれ決意を抱くシーンがあり、なかなかに綺麗な物語となっている。

スリラーバーク編は全体的に大きな展開があるわけではないけれど、ゲッコーモリアを撃破したあとに王下七武海くまがやってきて、うんぬんのシーンは結構見応えがあった。

その後シャボンティ諸島編ではいわゆる最悪の世代と呼ばれる懸賞金のかかった曲者たちが一同に集っており、ルフィは天竜人を殴り、ロジャーの右腕レイリーと出会ったり、海軍大将黄猿が出てきたりなど目まぐるしく展開するさまはなかなかにワクワクする。しかしながら天竜人を手にかけたころによりバスターコールが発生、麦わら一味たちは圧倒的な戦力の差になすすべなく、最終的にはくまの能力により、一味がバラバラに崩壊するというところでシャボンティ諸島編は終わる。

それからあとはルフィを中心とした物語が盛り沢山で、女ヶ島で王下七武海ボア・ハンコックと出会い、それからエース奪還を目指すインペルダウン編、勢いそのままマリンフォード・頂上決戦編へと続く。インペルダウン編はいわゆる海賊たちが捕まっている監獄島でルフィが最下層に捕らえられているエースを奪還することを目的とし、かつてアラバスタ編で激闘を繰り広げたクロコダイルやその、彼の設立した、えーとバロックワークスだ、その中のMr.1やMr.2、Mr.3あるいは道化のバギーなどを巻き込む大騒動を起こす。けっこうドタバタ劇って感じだけど、ルフィを中心に進んでいくからわりと面白かった。最初は敵だったクロコダイルだけど、また別のシーンになると実はいいやつなんじゃないかと錯覚してしまうのは漫画の妙だわね。

マリンフォード編は正直、感動するだのどうのってまあ、それも勿論ないわけじゃないけれど個人的には普通だった。それよりもむしろ、エースが死んだあとジンベエと話すシーンでお前にはまだ残ってるもんがあるじゃろ、みたいな台詞に対してシャボンティ諸島でバラバラになってしまった一味を思い、「仲間がいるよ、仲間に会いてえ」と泣くシーンのほうがよほどグッと来た。けどまあ冷静に考えて、海賊王ゴールド・D・ロジャーの実子っていう事実だけで処刑されてしまうのも可哀そうすぎるけども、エースさん。だけどそれだけ海賊王という称号、あるいは彼が見つけた「一つなぎの大秘宝(ワンピース)」の存在、またはそれが知れ渡ってしまうことが世界政府にとってはとんでもなく都合の悪いことなんだなということは理解ができた。実際に頂上決戦をあとに、歴史を語ると言われるポーネグリフや「Dの意思」には世界政府が絡んでいて、その世界政府というのはかつて800年以上前に20人の王により創設されたもので、その設立には世界貴族(天竜人)がかかわっているということからも、ルフィをはじめとするDの意思を継ぐものたちが物語において海賊の対をなしている海軍ひいては世界政府にとっては天敵なのかもしれない、そういう描写が各所に見られることは間違いない。それらをたとえば「うねり」という言葉で表すならば、Dの意思を継ぐものたちはつねに世界政府と争っており、現在もそれが続いている、のかもしれない。わからんけど。そう、実際は何もわからん。ともあれ物語を読み進めるにつれ、ワンピースは海賊たちのストーリーという枠では収まらないんだね、ってのが分かってきて今後の展開も楽しみです。

頂上決戦後、ルフィはシャボンティ諸島で無事に一味と合流することができ、それが61巻で表紙は第1巻とまったく同じ構図になっている。ってことはたぶん1~60巻までが第一部という構成で、61巻以降は2年後みんながパワーアップをしたあとの新世界編ということになって、また新しい気持ちで読むことができる。もちろん物語を積み上げてきただけ、各々のストーリーはより重厚感を増していき、読み応えも充分にある。

ひとまずはここまでで区切りとしてまた次回、書く気持ちがあれば新世界編もダラダラ雑感をつづっていこうかと考えます。

 

To be continued...