イン・ザ・京都

 

秋の色づく京都に行こうと思ったけれど、シニア夫婦ふたりを連れていくには少々無茶をする気がしたので、10月の3連休に両親を連れて京都に旅行することにした。

母は小学校ぶり、父も専門学校以来、ともに約半世紀の歳月を過ぎ令和の京都に行くとは思いもしなかっただろう。少なくとも、子どもの助言あるいは何かしらのきっかけがない限り食指も動かない年齢になっていた。

旅行に行くまでの間は両親もふたり、YouTubeなんかで京都のストリートを歩いたりグルメの動画を結構見漁っていたらしい。行くと決まれば好奇心も多少刺激されるというもの。認知症が怖い両親にとってはいい勉強にもなっただろう。

当日は指定席満員の新幹線のぞみに乗車し、昼前に京都駅へ到着した。駅は有象無象の人々でごった返していたけれど、自分が想定したよりは少ない印象だった。結果的にその観測事項は2泊3日の間、いい方向へ影響し、どの観光地に行っても漏れなく長時間待たされるということはなかった。年寄にとってはこの上ないほど、いい旅になったと自覚している。その代わり、路線バスには乗らない方がいいということも学んだ。秋の京都で路線バスに乗るのはあまりに無謀すぎたので後学のために記録しておく。

しかしなにせ、どこに行っても海外旅行客の多いこと。中国人観光客が多いのもさることながら欧米諸国の観光客が多いのが印象的だった。割合としてはほぼ半々。バスの量では圧倒的に中国だけど、欧米諸国はひと家族単位で多くいた印象を受ける。そして彼らに共通することとして荷物がでかい。そのため公共交通機関においてスペースを取ってしまうため、もっとも影響の出やすい路線バスはおすすめできない。

実際に自分たちも路線バスには乗らず、基本的な移動は電車かタクシー、または少しなら歩きという感じで、動く時間帯なんかも配慮して極力人混みに衝突しないルートを選ぶようにした。その甲斐もあり、早朝の清水寺ではいい景色を写真に収めることができた。まさしくパンフレットを見るような。

実際、今回の京都旅行で巡った観光地としては、行った順に西本願寺壬生寺、二条城、清水寺、八坂神社、知恩院花見小路通平安神宮金戒光明寺京都御所天龍寺渡月橋金閣寺京都タワーであった。老人の体力が心配であったけど、どうにか二人とも満足げに帰ってくれたので何よりだった。正味両親はそんなに写真なんか撮るタイプの人間ではないのだけど、懐かしさであったり、建造物の荘厳さであったり、地元ではお目にかかれない光景なんかに出くわすとスマホを取り出して熱心に撮影していたのがやけに印象的だった。自分と同じぐらい撮っていたように思う。とくに父に関しては写真は見返さないからそんなに撮らない人だけど、結構興味深そうにパシャパシャ撮っていた。

それから京都といえば神社・仏閣のいわば総本山に当たる場所が多く存在する。うちは父方が浄土真宗で、母方が浄土宗のため、西本願寺知恩院もめぐることにした。双方、特別信仰深い門徒ではないけれど、御殿の中に入るとやはり特別な雰囲気を感じたようでそこらの観光地よりよほどじっと時間を過ごしていたような気がする。観光地なんてのは正直一回ぐらい見て、わあと盛り上がってしまえばあとはするする下っていくものであるけれど、知恩院では優雅で幽玄な時間を過ごすことができたように思う。

久しぶりに誰かと旅行をして、ちゃんと楽しむことができた。

両親にとってもそういうふうに少しでも感じてくれたら誘って良かったよね。