ゆるい幸せ。

 

年末を迎えるたびに今年は何ができただろうか、って振り返る。そうして年始に立てたあれこれの目標について一つずつ精査していく作業を行う。それらを経て最終的に総合評価・何点というレッテルを自分に貼り付ける。だから来年はこうしようという目標を新たに立てたりする。ところがこのプロセスは実際のところ虚無に等しい。自分は何にもなれず、どこにも行けず、それなりに身の丈に合った生活を送ってきたことにだけ満足をするだけだ。

12月が忙しく、現実逃避の行動の一つとして「ぼっち・ざ・ろっく」というアニメを観た。絵に描いたような陰キャの女の子がバンドを組んで少しずつ成長していくストーリーだった。音楽を題材にした作品で、キャラクターの名前や舞台、話のサブタイトルと言ったバックグラウンドにアジアンカンフージェネレーションのオマージュが散りばめられている。アニメのことは兎も角として、アジカンの曲を聴く機会を久しぶりに得て、ちょうど自分が中学生・高校生に聴いていたこともあり懐かしさを感じた。12月はもっぱらアジカンのアルバムを聴き漁る日々だった。イントロやキャッチーなメロディはBEST HIT AKG(2012)に詰められている。大衆が一度は耳にしたことのある曲ならこのアルバムは間違いなくて、そのどれもが自分も好きだ。

とりわけ12月の年末、冒頭に書いたような一年を清算する今日この頃は『ソラニン』の歌詞がじんわりと身に染みてくる。この曲だけは主題歌となった作品の作者の作詞なので厳密なところでいえばアジカンの曲の中ではジャンルが違うところにあるけれど、でも今の時期にはぴったりだと思うな。一年の振り返りつつ、悶々とすることがあれば聴いてみるといい。

アジカンの曲は何にしてもイントロが好き。心地よいベースと精密なドラムから始まる前奏はそれだけで曲が分かるくらいにしっかりしている。最近の曲はそう考えるとわかりやすいイントロのある曲が少なくなった気がする。気のせいかしら。

それと12月は身内の不幸があった。家族葬の話も出たが、結局大きめの葬儀を執り行った。もう最後は施設にいた人なのでそんなに参列する人も多くないだろうと高を括っていたけれど、実際は大勢の人が来た。喪主やその兄弟、家族の人望のおかげだ。自分は弔辞を読むことになった。孫代表というかたちで、大きな役目を背負わせてもらった。結果的にしてよかったな、と思った。自分にとって後悔がないし、この先の将来を多少なりと支えてくれる精神的な経験をすることができた。十数年間、続けてきた文章力は人の心を強く揺さぶることができた実感があった。見くびられていたわけじゃない、だけどそれ以上の価値をそこに見いだせただけ、自分の文章にもまだ力は残っていたのだと自信を持つことができた。

さて、来年はうさぎ年ですか。二兎を追う者は、と言わず得られるときには得られる経験をたくさんする年にしたい。あとは2022年に出来ていなかったことを改めて真摯に取り組む年にしたい。それから欲望と快楽はなるべく後回しにします。